つくる
2026.05.29

「出さない」という意地。

——出荷前の最終関門が、石井食品の約束を完結させる

八千代工場 総務長沼さん Aライン平島さん
八千代工場 総務長沼さん Aライン平島さん

石井食品の商品がお客様の手に届くまで、最後にどこを通るのか——。製造ラインを経た商品は、束テープ巻き・箱詰め・出荷前検品を担う「商品調理」の工程を通り、初めて世に出ます。

この場所は、単なる梱包の工程ではありません。印字の不良、袋の汚れ、商品の損傷——製造の各工程でチェックを重ねてきた商品を、もう一度「人の目」で確認する、最後の砦です。
今回は、八千代工場・商品調理のシニアマネージャー・平島さんと、前マネージャーで現在は工場総務で勤務する長沼さんに、知られざる最終工程の使命と、現場の誇りを語っていただきました。

司会・編集:オウンドメディア編集部(ESG推進チーム:仲山/顧客体験デザイン部:坂本)

目次

  •  自己紹介と現在の役割
  •  1時間9,000袋の戦場。複雑で繊細な「仕上げ」の現場
  •  なぜ完全自動化しないのか
  •  「デザイン」よりも「安心」。品質保証番号を守る戦い
  •  ブランドを守るのは、現場の泥臭い努力

自己紹介と現在の役割

インタビュー風景①
インタビュー風景①

坂本: まずはお二人の自己紹介をお願いします。

平島: 2019年12月に入社し、ロジスティクス部での業務を経て、2024年4月から商品調理グループのシニアマネージャーを務めています。現場のマネジメントが主な仕事です。

長沼: 2002年にパートタイマーとして入社し、翌年社員に登用されました。長年にわたって商品調理(仕上職場)のマネージャーを担当し、2025年4月からは工場総務に異動しています。今は研修担当と新入社員のメンターを務めています。

1時間9,000袋の戦場。複雑で繊細な「仕上げ」の現場

坂本: まずは、「商品調理」という部署がどんな仕事をしているのか教えてください。

平島: 簡単に言えば、包装された商品を最終的な形に仕上げて、出荷できる状態にする仕事です。具体的には、ミートボールやハンバーグを、お客様からの注文に合わせて2個束や3個束に束テープで巻いたり、それを段ボールに箱詰めして、物流部門に引き渡すまでの準備を行います。

坂本: 単純な作業のように聞こえますが、実際はかなり複雑だそうですね。

平島: そうですね。商品アイテム数も多いですが、何より大変なのは「形態」の多さです。同じミートボールでも、バラで欲しいお店、2個束(2P)で欲しいお店、3個束(3P)で欲しいお店と、要望はさまざまです。それをその日の注文数に合わせて、正確に作り分けなければなりません。

坂本: どれくらいのスピードで流れてくるのですか?

平島: ミートボールのラインだと、1時間に約9,000袋です。

坂本: 9,000袋! それをさばきながら、束テープの種類を変えていくわけですか。

平島: はい。機械で巻く部分もありますが、セットするのは人の手です。束テープが歪まないように、箱の中で商品が暴れないように、スピードの中で正確性が求められます。もし間違った形態で箱詰めしてしまったら、お客様に迷惑がかかってしまいますから。

長沼: 昔はもっと手作業が多かったですけど、今は機械化が進みましたね。でも、その分スピードも上がっているので、判断の速さが求められる現場であることに変わりはありません。

なぜ完全自動化しないのか

仲山: それだけのスピードなら、ロボットなどで完全自動化した方が効率的ではないですか?

平島: 確かにロボット化できる部分もありますし、進めていきたい部分もあります。でも、私たちはあえて「人の目」を残す工程を大切にしています。それは、機械では見抜けない微細な異常を検知するためです。

仲山: 具体的にはどんな異常ですか?

平島: 例えば、印字のかすれや、脱気包装の中に気泡が入っていないか、といったことです。もちろん、前の工程でも機械や人で検品はしていますが、お客様に販売するものに本当にミスがないのかを最後に確認するのが私たちの役割なんです。

仲山: それが「最後の砦」と呼ばれる所以ですね。

長沼: 私が現場にいた頃から、「仕上職場(商品調理)は最後の砦だ」という認識が強くありました。ここで見逃したら、そのままお客様の手元に届いてしまう。石井食品の看板に傷がつく——その責任感は、今も昔も変わりません。

平島: 毎日何万個と作っていれば、どうしても何個かは不良品が出ます。それを「これだけ作っているのだから仕方がない」で済ませるのではなく、「絶対にお客様には届けない」という執念で食い止める。それが私たちのプライドです。

仲山: 実際に、仕上職場での発見でトラブルを未然に防いだことも?

平島: あります。箱詰めする時の手触りや見た目で気づくことがあります。そんなリスクのある商品は、絶対に出荷しません。

「デザイン」よりも「安心」。品質保証番号を守る戦い

パッケージ右下に品質保証番号を記載されています。
パッケージ右下に品質保証番号を記載されています。

坂本: 石井食品の商品には、いつどこで作られたかが分かる「品質保証番号」が印字されていますね。

平島: はい。原材料の履歴から製造日まで追跡できる、石井食品の「自信の証」です。この番号と賞味期限を、お客様に正しく伝えることも私たちの重要な任務です。

坂本: 実は、パッケージデザインのリニューアル案で、現場から「待った」がかかったと聞きました。

平島: デザインチームからは、もっと商品名を大きくしたいから「中身が見える透明な窓を小さくしたい」とか、デザインをすっきりさせたいから「印字スペースを狭くしたい」という要望がありました。でも、私たちは「それは困る」と反対しました。

坂本: なぜですか? デザイン性が上がれば売上にもつながるかもしれませんが。

平島: 「窓」は、単に中身を見せるためだけでなく、私たちが先ほど言った気泡や中身の状態をチェックするために必要なサイズなんです。窓が小さすぎると、異常に気づけないかもしれない。印字スペースもそうです。包装フィルムは柔らかいので、製造工程で微妙に反ったりズレたりします。ギリギリのスペースだと、印字が枠からはみ出して読めなくなるリスクがあるんです。

長沼: 印字が読めなければ、お客様に安心を届けられません。デザインの美しさも大切ですが、私たちにとっては「安心をお届けすること」「異常を発見できること」が最優先なんです。

坂本: なるほど。販売よりも、安心安全の実利を取ったわけですね。

平島: 厳しいことを言うようですが、そこは譲れません。お客様が万が一の時に頼りにするのがあの番号ですから。

ブランドを守るのは、現場の泥臭い努力

インタビュー風景②
インタビュー風景②

仲山: お話を聞いていると、皆さんが石井食品のブランドを守っているのだと強く感じます。

長沼: 一般的な大量生産の工場なら、「多少の不良率は計算内」として処理してしまうかもしれません。でも、石井食品はそうじゃない。「イシイのミートボールなら安心だよね」と思って買ってくださるお母さんたちの期待を裏切るわけにはいかないんです。

平島: 商品が出荷されて店頭に並び、お客様が手に取る。その時、一番最初に目にするのは私たちが仕上げたパッケージです。箱の中で商品が暴れて傷ついていたり、束テープが汚く巻かれていたりしたら、どんなに中身が美味しくてもがっかりされますよね。

仲山: 温度管理にも気を使っているそうですね。

平島: はい。チルド商品ですから、箱詰めしたら一刻も早く冷蔵庫に入れないといけません。出荷トラブルなどで滞留しそうになったら、すぐに物流部門と連携して対応します。味や品質を落とさないよう、時間との戦いです。

仲山: 最後に、今後の抱負をお願いします。

平島: これから商品のバリエーションが増えたり、新しい形態の商品が出ることもあると思います。大変にはなりますが、どんな商品であっても「石井食品クオリティ」でお客様に届けること。この「最後の砦」としての役割を、スタッフ全員で全うしていきたいです。

【編集後記】 「最後の砦」という言葉は、現場から自然に生まれた言葉だと聞きました。マニュアルに書いてある言葉ではなく、長年この場所に立ち続けてきた人たちが共有してきた誇りの言葉です。1時間に約9,000袋が流れる中で、気泡のある商品を手触りで見つける。窓の大きさをデザインの要望より品質検査の要件を優先して守る。こうした泥臭い積み重ねが、石井食品の「安心」を完結させています。