つくる
2026.05.29

「失敗するしかない」。

——現場の決断と挑戦が、石井食品の製造を動かし続けてきた

八千代工場 商品価値創造部 Aライン 保存調理グループの鈴木さん
八千代工場 商品価値創造部 Aライン 保存調理グループの鈴木さん

設備が壊れかけても、部品の調達先がなくなっても、3年間うまくいかない機械の問題を抱えていても——工場の現場は止まれません。
石井食品の充填職場で長年にわたって設備導入や現場改善を担ってきた鈴木さんに、製造の「裏側」を語っていただきました。印象的だったのは、何度も繰り返された一つの言葉です。「やりたいなら、失敗するしかない」。
やってみて、ダメだったとわかる。だから次が見える。その積み重ねが、石井食品の現場を育ててきました。

司会・編集:オウンドメディア編集部(ESG推進チーム:仲山/顧客体験デザイン部:坂本)

目次

  • 自己紹介と現在の役割
  • 現場の「もったいない」が、仕組みを変える
  • 現場の気づきと、知識をつなぐ仕組みづくり
  • 「失敗するしかない」——設備投資と決断の文化
  •  年末泊まり込みで作ったバルブ——3年間の修羅場
  • 石井らしさとは何か

自己紹介と現在の役割

仲山: まずは、現在どのような仕事をされているか教えてください。

鈴木: 今は設備導入の商談や工程スケジュールの調整、それから現場メンバーの教育が主な仕事です。経験の浅いメンバーもいるので、ノウハウが属人化しないよう、知識の「入口」を整えながら次世代に下ろしていくことに力を注いでいます。例えば、稟議書を出す前にスライドで内容を発表して承認をもらうという習慣を作ったり、インプットとアウトプットが可視化できる仕組みを入れたりしています。

現場の気づきと、知識をつなぐ仕組みづくり

坂本: 現場での改善は、どこから始まることが多いですか?

鈴木: だいたい些細な気づきからですね。例えばトマトペーストやトマト缶など、八千代工場の同じ敷地内にある別々の工場で似た素材を別々に発注していたことがありました。別々に頼むと、どちらかが余ってロスになる。だったら発注を一本化した方がいい、ということで改善しました。現場の小さな「もったいない」を放置しないことが、仕組みの話につながっていくんです。

仲山: 現場の技術伝承についても、独自の取り組みをされているそうですね。

鈴木: 現場って「知っている人がいれば回る」という状態が一番危ない。だから、特定の人に知識が集中しないよう、入口を作って情報を下ろしていく設計が必要なんです。経験2年ほどのメンバーにも、少しずつ判断できる機会を作っています。属人化をやめるのは気合いではなく、設計の問題ですから。

現場で商品チェックを行う鈴木さんの様子
現場で商品チェックを行う鈴木さんの様子

「失敗するしかない」——設備投資と決断の文化

仲山: 設備導入で、一番難しいのはどういう部分ですか?

鈴木: 最終的には社長の決裁をもらって立ち上げるわけですが、「これが良い・悪い」「うちに合う・合わない」をきちんと判断できる人が社内に少ないことが課題です。経験がないとわからないことが多いので。

坂本: どうやって経験を積んでいくんでしょうか?

鈴木: 失敗するしかないんですよ。買って、やってみて、ダメだった——それをやらないと本当のことはわからない。私もいろいろ買ってきました。でも決断できない人は現場を止めてしまう。止まる方がずっと痛い。失敗したらそれは次につながるチャンス、という気持ちで失敗を恐れずにやってみる感覚が、現場では大事だと思っています。

年末泊まり込みで作ったバルブ——3年間の修羅場

坂本: 実際に現場で長年苦労したエピソードを教えてもらえますか?

鈴木: ありますよ。ソースに具材が入る商品を充填する時の話です。具材が入ると空気も入るし、そもそも具材が通らなくて詰まる。それで3年近く、さまざまな機械化のテストをしましたが、ずっとうまくいかなかった。

仲山: 3年間……。

鈴木: それで「最後の手段」ということで、材料を集めてバルブを自作することにしたんです。12月30日から会社に泊まり込んで、部材を磨いて、組み立てて、アクチュエーターをつけて、板を切って、固定して——。

坂本: 年末に泊まり込みでバルブを作ったんですか。

鈴木: そうです。それで年明けにテストしたら、見事に解決しました。それまで具材とソースのバランスにばらつきがあったのに、均一に入るようになったんです。結局、形状の問題だったんです。普通のバルブだと隙間が狭くて、ソースは通るけどキャベツが通らない。最適なサイズのものに付け替えることで、キャベツを噛み込まない形にする——その発想に変えたら解決しました。本当に大変でしたが、あれで一つ大きなことを学びました。

機械の整備を行う鈴木さんの様子
機械の整備を行う鈴木さんの様子

石井らしさとは何か

仲山: 他社には真似できない、石井食品ならではの強みはどこにあると思いますか?

鈴木: 難しい質問ですね。あるのかないのかも正直わからない部分もある。ただ、チャレンジ精神だけは他のメーカーよりあるのかなと思います。あと、いい意味で真面目すぎるところ。

坂本: その真面目さが、今の時代に響いているとも感じますか?

鈴木: 感じますよ。最近の若い人たちが会社を選ぶ基準が変わってきていて、『社会に貢献しているから』という基準で会社を選ぶ人がいるそうです。商品も「この商品にはこういう背景がある」と語れないと、選ばれにくくなっている。現場が頑張っているだけでは伝わらない。でも内情をちゃんと話せると「応援したくなる会社」になる。時代はそっちに向かっていると思います。

【編集後記】 「失敗したら、それは次へのチャンス」——鈴木さんが口にしたこの言葉が、ずっと耳に残っています。年末に泊まり込んでバルブを磨いた夜も、3年間うまくいかなかった時間も、決してきれいな話ではありません。それでも現場は止められない。止めないために決断して、失敗して、また立ち上がる。その積み重ねが、石井食品の製造の底を支えています。