「美味しい」を作るのは機械、その機械を作るのは人。
――レジェンド機械屋が語る、石井食品の味を支える技術と情熱
石井食品の商品が「美味しい」と言われる理由は、厳選された素材や無添加調理※ へのこだわりだけにあるわけではありません。その素材の良さを最大限に引き出し、安定した品質で食卓に届けるためには、製造ラインを支える「設備」の存在が不可欠です。
しかし、ただ高性能な機械を並べれば良いというわけではありません。石井食品には、機械を自社の味に合わせてカスタマイズし、日々のご機嫌を伺いながら調整し続ける「機械屋」たちがいます。
今回は、入社以来40年以上、八千代工場のラインを守り続けてきたレジェンド・辻さんと、その技術と魂を次世代につなぐ松澤マネージャーに、知られざる製造現場の裏側を語っていただきました。
司会・編集:オウンドメディア編集部(ESG推進チーム:仲山・顧客体験デザイン部:坂本)
目次
- 自己紹介と現在の役割
- ラインの進化と共に歩んだ40年。「手作業」から「自動化」へ
- 機械は「料理人」。石井食品仕様へのあくなきカスタマイズ
- ラインは止めるな!現場を守る「守り人」の矜持
- 技術と魂を次世代へ。未来へのバトン
自己紹介と現在の役割
坂本: まずは辻さん、これまでの歩みを教えていただけますか? 昭和54年(1979年)入社ということは、工場の歴史そのものですよね。
辻: そうですね。八千代にハンバーグ工場ができて翌年くらいに入社しました。最初は「仕上」の工程に配属されたんですが、当時はまだ手作業の世界でしたよ。流れてきた商品を人が手で箱に入れて、糊で貼って組み立てて……という感じで。そこから少しずつ機械化が進んでいきました。
坂本: そこから、どうして機械メンテナンスの道へいかれたのですか?
辻: きっかけは年末のおせち料理の製造ラインを作ったことですね。「もともと興味のあった設備の仕事ができるなら!」ということで、八千代工場の設備メンテナンスチームに参加しました。そこから充填職場に行ったり、仕上げに戻ったりしながら、工場の機械全体を見るようになりました。
坂本: 松澤さんは入社当初からメンテナンスチームだったんですか?
松澤: 入社後はファクトリーエンジニアリング部(現エコロジー推進部)に配属になり、工場のインフラ設備の管理やISO14001事務局に協力していました。その後、充填、管理室、充填を経て、現在のメンテナンスチームに至ります。
ラインの進化と共に歩んだ40年。「手作業」から「自動化」へ
松澤: 辻さんは、工場のレイアウトが何度も変わる中で、その都度ラインを組み直してきた生き字引ですよね。
辻: ま〜(笑)。一番大きな変化は、やっぱり「スパイラル殺菌機」の導入でしたね。袋詰めと殺菌の工程が自動でつながったことにより時間が短縮され、効率が劇的に上がりました。
仲山: なるほど。そういう感じで段々と製造ラインが機械化されていったんですね。機械の変化が、味にも影響するケースもあるのですか?
松澤: 機械と味の関係は非常に大きいです。例えば、殺菌のための加熱時間が長いとソースの味がぼやけてしまいますが、ホット充填機なら温かいまま充填※1 できるので、余計な加熱をせずに済むんです。石井食品のミートボールがフレッシュでマイルドに感じるのは、実はこの充填方式や殺菌工程の違いも関係しているんですよ。
※1 袋詰め工程
機械は「料理人」。石井食品仕様へのあくなきカスタマイズ
仲山: お話を聞いていると、お二人は単に機械を直すだけでなく、石井食品の味を作るために機械を「独自に調整」しているように感じます。
松澤: その通りです。一般的な食品メーカーなら、機械メーカーから買ったものをそのまま使いますが、うちは素材や無添加調理※ に合わせて、結構なカスタマイズをしていくんです。
辻: メーカー標準のままでは、石井の味が出せないこともありますからね。例えば充填機。基本構造はメーカーのものですが、ノズルやセンサー、ポンプなどは石井食品独自のものを選定して付けています。
仲山: 特に卵・乳成分を抜いた仕様に切り替えた時は、機械側でも苦労があったのでは?
辻: ありましたね。つなぎの卵を抜いたりした影響で、ミートボールの生地が柔らかくなった時が一番ハラハラしました。成形機から出てきた柔らかいミートボールが、自重で潰れてしまわないか、充填機の中で形が崩れないかと。ギリギリのラインを攻める調整が必要でした。
松澤: 素材が変われば、機械の設定も変えなければならない。まさに機械という「道具」を使って、料理をしているのと同じなんです。
辻: 「キャベツハンバーグ」の時も大変でした(笑)。目指したのは、キャベツそのものを味わうハンバーグ。キャベツを主役にするためにはキャベツの歯ごたえを残すのが重要です。しかし、ソースの中に入れたキャベツが大きすぎるあまり、機械の吸い上げ口に詰まってしまう。あるいは、ソースだけが先に吸い込まれ、肝心の具材が釜の底に取り残されてしまう……。
何度テストを行っても、一袋ごとに具材とソースのバランスがバラバラになり、私たちが届けたかった「キャベツを味わう体験」という商品にたどり着きませんでした。「キャベツをもっと小さく切れば、機械はスムーズに動く」という選択肢もありましたが、それでは私たちがこのキャベツハンバーグを作る意味がなくなってしまいます。
仲山: 機械に合わせてキャベツを小さくするのではなく、この大きなキャベツをどうやってそのままお客様の食卓へ届けるかを追求したんですね?
松澤: はい。機械の調整と具材の投入方法をゼロから見直すことにしました。関係者全員で、どうすれば理想の商品づくりができるかを試行錯誤しました。
もともと機械に付属されていたホースのようなものをキャベツハンバーグのために最適なサイズのものに付け替えるという、石井食品オリジナルのカスタマイズを施したんです。その結果、理想のカットサイズを維持しながらソースとバランスよく袋詰めできる方法へたどり着くことができました。
それぞれの商品にはそれぞれの打ち出したい特徴があり、それを叶えるために機械に改良を加えてでも販売したい商品を製造すること——それが私たちのこだわりです。
仲山: まさに職人技ですね。石井食品の工場において機械をカスタマイズすることのできる技師の方々が重要視される背景がよくわかりました。
ラインは止めるな! 現場を守る「守り人」の矜持
坂本: では、日常業務としての機械のメンテナンスはどのように行われているのですか? 朝がとても早いと伺いましたが。
辻: そうですね、だいたい朝の5時くらいに出社して製造のみなさんが困らないようにメンテナンスしています。調理機器には製造中はまったく機械を止められないものもたくさんあり、そういった機械はラインが動き出す前に点検をします。
坂本: 何かトラブルがあれば、その日の生産に関わりますもんね。
辻: そうなんです。もし稼働中に何らかのトラブルで機械が止まってしまったら、その日の生産はストップしてしまいます。そうなると、前後の工程含め社員全員の手が止まってしまう。「ラインを止めてはいけない」というプレッシャーと責任感は常にありますね。
松澤: 僕たちは、機械の「お医者さん」みたいなものです。毎日見ているからこそ、「何か音が違うな」「ベルトが削れてるな」という予兆に気づける。それを逃さずに、部品交換をしたり、先回りしてメンテナンスをしています。
辻: あとは、製造メンバーとの連携も大事ですね。彼ら、彼女らが「機械がいつもとちょっと違うな」と感じたときに「何か音が変だよ」と教えてくれます。そういう現場の声が、大きなトラブルを防ぐ一番の情報源なんです。
技術と魂を次世代へ。未来へのバトン
仲山: 最後に、ここまでお伺いした機械のカスタマイズ技術やメンテナンス業務への責任感を、メンテナンスグループとしてどのように次世代に育てているのでしょうか?
松澤: 辻さんたちの技術は、「石井の味への想い」に支えられています。これは一朝一夕には身につきません。だからこそ、若いメンバーも含め現場で一緒に汗をかきながら学んでいっています。
仲山: 単に修理ができるだけでなく、石井食品の「味」を理解するエンジニアが必要なんですね。
松澤: その通りです。素材の特長を知り、製造現場の悩みを知り、そして機械の特性を知り尽くした上で最適な「解」を出せる人。それが石井食品らしいエンジニアです。
辻: 機械も人間と同じで、年を取ればガタも来ます。でも、手をかけてやればちゃんと応えてくれる。これからも、石井食品の美味しい商品が皆様の食卓に届くよう、機械たちの声に耳を傾けながら、裏方として支えていきたいと思います。
【編集後記】 普段、私たちが何気なく食べているミートボール。その一粒一粒の裏には、素材だけでなく、機械のコンディションを見極め、調整し続ける「機械屋」たちの情熱がありました。彼らの存在を知れば、いつもの商品の味わいが、また少し深く感じられるかもしれません。
※当社での製造過程においては食品添加物を使用しておりません。