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2026.06.11

「旬」は10日間しかない──日本料理の家元が語る、季節を食べる愉しみ

ラジオ「石井食品 presents おいしいの種」#7

毎週日曜日の朝、ラジオ番組「石井食品 presents おいしいの種」では食の楽しさと大切さをお届けしています。今回のゲストは、江戸時代から続く日本料理の流派「近茶流(きんさりゅう)」の宗家であり、東京・赤坂で柳原料理教室を主宰する料理家・柳原尚之さん。石井食品のおせち料理の監修も手がける柳原さんが、日本料理の奥深さと旬の食材”鰹”のおいしい食べ方を語ってくれました。

目次

  • 帆船で世界を巡った料理家・柳原尚之さんとは
  • 「旬」は本来10日間しかない、という話
  • 家庭で再現!柳原先生直伝「初鰹のみぞれ和え」
  • まとめ

ラジオ出演者

柳原 尚之(やなぎはら なおゆき)
料理家。江戸時代より続く日本料理の流派「近茶流(きんさりゅう)」の宗家であり、東京・赤坂で柳原料理教室を主宰。東京農業大学卒業後、小豆島の醤油会社で研究員を務め、その後オランダの帆船「スワン・ファン・マッカム」に乗り込んで世界を巡るという、料理家としては異色の経歴を持つ。数々のテレビドラマなどの料理監修・時代考証も手がける。石井食品のおせち料理の監修も担当。

岩田 知佳(いわた ちか)
InterFM ラジオDJ。千葉県船橋市出身。石井食品・石井智康社長と同郷・同級生という縁から、ラジオ番組「石井食品 presents おいしいの種」のDJを務める。2児の母としての日常や、食と子育てにまつわるリアルな視点が持ち味で、ゲストから自然体の言葉を引き出す聞き上手。毎週日曜の朝、食を通じた温かい会話をリスナーに届けている。 

石井 智康(いしい ともやす)
石井食品株式会社 代表取締役社長。千葉県船橋市出身。同世代の経営者や地域の仲間とのつながりを大切にし、食品業界の未来と食文化への貢献を発信し続けている。娘を育てるパパとしての顔も持ち、日々の食卓に寄り添う目線を経営にも番組にも活かしている。毎週日曜の朝、食の楽しさと大切さをリスナーへ届けるホストを務める。 

帆船で世界を巡った料理家・柳原尚之さんとは

岩田さん:今日のゲストはどんな方なんですか?

石井:柳原先生には弊社のおせち料理の監修もしていただいています。非常に造詣 が深く、歴史や技術を含め色々なことをご存知の先生なんです。実は、僕の 母方の従兄弟と柳原先生が同級生で、小さい頃にスキー合宿などで一緒に遊 んだことがあるという縁もあるんですよ。

岩田さん:柳原さんは大学を卒業されてから、帆船で世界を廻られたとか?

柳原さん:大学卒業後、小豆島の醤油会社で研究員を務めたあと、帆船「スワン・ファン・マッカム」に乗り込み、キッチンクルーとしてヨーロッパ各地を航海しながら、各国の料理を学びました。

石井:ご自身の料理の原体験として、世界を回った経験が生きているんでしょうね。

柳原さん:そうですね。各国の食文化に触れたことで、改めて日本料理の個性や奥深さ に気づかされました。

帆船で世界を航行しながら料理を学ぶという、稀有な経歴を持つ柳原さん。その視野の広さが、江戸時代から続く流派の宗家としての深みをさらに増しているようです。

江戸時代から続く「近茶流」が大切にしてきたこと

岩田さん:「近茶流」というのはどんな流派なんですか?

柳原さん:江戸時代の文化・文政期に興った流派で、茶の湯で茶の前にお出しする「茶懐石(ちゃかいせき)」を代々引き継いできました。祖父の代以前は女性が 継承してきた歴史もあって、出刃包丁は15cmや柳刃包丁は21cmといった女性でも扱いやす い短めのものを使うなど、独自の特長があります。

岩田さん: お料理の盛り付けにもこだわりがあるんですか?

柳原さん:過美にならないこと、これが大切にしているポイントです。食べられるもの だけを綺麗に盛り付ける「シンプルさ」を大切にしています。余計なものを 足すのではなく、引き算で美しさを表現する、そういう感覚ですね。

石井:引き算の美学ですね。食品メーカーとしても、素材の良さを活かすという点 でとても共感します。

「料理の盛り付けは過美にならず、食べられるものだけを綺麗に盛り付ける」という近茶流のシンプルさへのこだわり。江戸の美意識が現代の食卓にも通じるエッセンスを感じます。

「旬」は本来10日間しかない、という話

岩田さん:柳原先生、日本料理における「旬」の考え方を教えてください。

柳原さん:旬とは本来「10日間」を指す言葉なんです。上旬・中旬・下旬というのも、そこから来ています。旬の中にも3つの段階があって、旬より少し早く出始めた「走り(はしり)」、ちょうど良い時期の「盛り(さかり)」、旬の終わりにあたる「名残り(なごり)」と分けて捉えるのが、旬の醍醐味の一つです。

岩田さん:「走り」を尊ぶ文化もありますよね。

柳原さん:そうなんです。季節感を喜ぶ気持ちは、平安時代から続く日本人の感性です。季節の移ろいを歌に詠み、料理に取り入れる。五節供に旬の食材を使った節供料理を食べながら願いを込めるのも、同じ心持ちから来ていると思います。

石井:食べることが季節を感じる手段だったんですね。

家庭で再現!柳原先生直伝「初鰹のみぞれ和え」

岩田さん:5月の旬といえば何でしょう?

柳原さん:5月といえば「鰹」ですね。端午の節句(5月5日)には「勝男(かつお)」にかけて鰹を食べる習慣もあります。「走り」の初鰹は、脂が少なくさっぱりしていて、大根おろしなどの薬味との相性が抜群なんですよ。

岩田さん:藁焼きで食べるのが料理屋さんでは定番ですが、家庭での焼き方にも工夫があるんですか。

柳原さん:ご家庭でフライパンを使ってもできますよ。フライパンを温めて、油を引かずに皮目から焼いていきます。皮下の脂肪の癖を落とすためで、全体が白くなるまで転がしながら焼くのがポイントです。

石井:油なしで焼けるんですね。意外です。

柳原さん:焼いた後は氷水にとって素早く冷ます。この一手間で、食感と風味がぐっと引き締まります。

まとめ

帆船で世界を巡り、江戸から続く近茶流を守り続ける柳原尚之さんが今回教えてくれたのは、日本料理の本質とは「旬を愛でる感性」にあるということ。「走り・盛り・名残り」という旬の細やかな区別や、端午の節供に鰹を食べる習慣など、食と季節を深く結びつけた日本の食文化の豊かさを改めて感じました。みぞれ和えのレシピはシンプルながら、素材を最大限に活かす近茶流の哲学が詰まっています。ぜひ今週末の食卓で試してみてください。

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