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2026.09.04

なぜ、熊本なのか―つなぎ手とともに、熊本の作り手をたずねて

熊本#01|熊本の作り手と読者をつなぐ、クリエイターたち

【編集部より】 こちらのコラム取材は、令和8年熊本地震が発生した同日の午前中、地震発生前に熊本県内で行いました。熊本という土地と、そこで今もものづくりを続ける人たちへの敬意を込めて、取材したときのことばをお届けします。

石井食品にとって熊本は、2016年の熊本地震を機にご縁が生まれ、食を通して地域とのつながりを育んできた大切な地域です。そのご縁をきっかけに、創業以来初となる地域共創おせち『すごい熊本酒肴箱~生産者とともに、一年かけて作り上げた一箱~』を、熊本の生産者やクリエイターとともに一年をかけてつくりました。

 食材も、味つけも、外箱のデザインも、紹介する映像も熊本の人と一緒につくります。案内してくれるのは、この連載の「つなぎ手」として読者の皆さんと熊本をつなぐ、熊本県在住のクリエイティブディレクター・佐藤かつあきさん。熊本の人の目線で作り手をたずねる一歩目として、川尻のデザイン事務所を訪ねました。

目次

  • 佐藤かつあきさんと、川尻の作り手をたずねる
  • なぜ、熊本なのか ― 2016年から続くご縁
  • なぜ、熊本の箱は”花”なのか ― 肥後六花と、黒と赤
  • 地元の手で描き、地元の手で撮る
  • フォトグラファーの穴見春樹さんが、現場で受け取ったもの
  • まとめ ― 知ることが、つながること

お話を伺った方

佐藤かつあき(さとうかつあき)さん

熊本を拠点とするクリエイティブディレクターで、「株式会社かつあき」を主宰。地域や企業の魅力を伝えるしごとや、ものづくりのディレクションを幅広く手がけてきました。熊本の文化や慣習を知り、石井食品と熊本の作り手のあいだに立つ人。だからこの連載では、作り手と読者、そして熊本とその外をつなぐ「つなぎ手」として、毎回ともに歩んでもらいます。石井食品とのつながりは、2016年の熊本地震後、被災地の声から生まれた「potayu(ぽたーゆ)」を共同開発したときから。佐藤さんはパッケージデザインを手がけました。今回は『すごい熊本酒肴箱』の包材や映像のディレクションを担います。

古庄美和(ふるしょう みわ)さん /井上千夏(いのうえ ちか)さん

熊本市のデザイン事務所「apuaroot(アプアロット)」のデザイナー。
書籍やZINE、フリーペーパー、展覧会のディレクションなど、幅広く手がけてきました。今回は『すごい熊本酒肴箱』の包材と冊子を担当します。
※お二人は顔出しをされていないため、写真は手元・仕事場を中心に。

穴見春樹(あなみ はるき)さん

阿蘇郡小国町出身。熊本市を拠点に、スタジオ「graine」を構えるフォトグラファー・ビデオグラファー。生産者の方々が日々向き合う現場の空気感や魅力、ものづくりにかける熱量を、写真と映像で伝えます。

(写真提供:穴見春樹さん)

佐藤かつあきさんと、川尻の作り手をたずねる

熊本駅から2駅、川尻。かつて薩摩街道が通り、宿場町だったこの土地に、古庄さんと井上さんのデザイン事務所「apuaroot(アプアロット)」があります。この日、佐藤かつあきさんが、熊本のつくり手につないでくれました。熊本に暮らす作り手の目線で歩む――それが、この熊本の連載コラムです。

佐藤かつあきさんと石井食品のつながりは、2016年の平成28年熊本地震のあとに始まりました。震災を機に出会った方が10年の時を経て、また熊本とわたしたちをつないでいます。デザイン事務所も、また当時の震災とともにあります。

古庄さん:事務所があるここは、元々井上さんの実家があったところなんです。家は後ろにあるんですけど、10年前の熊本地震で住めなくなってしまって。それまでは市内の中心部を借りて、10年ぐらい仕事をしていたんですけど、地震のタイミングで、どっちにしても家を建てないといけなくなって。じゃあ、事務所も一緒につくろうとなり、住まいと仕事場はひとつづきになりました。

2人はこの川尻に根を張り、いまもここで手を動かしています。

地方で働くこと。それは、東京のように分業でしごとを回すこととは違う、と古庄さんは言います。

古庄さん:地方あるあるだと思うんですけど、東京みたいに分業制が成り立たないので、基本的に何でもやるんです。うちは2人でデザインをしていて、井上のほうが冊子やエディトリアルデザイン関係(本や雑誌の構成デザイン)、わたしがパッケージやロゴを担当することが多いです。紙のものは、何でも。

デザイン事務所「apuaroot(アプアロット)」の作品

なぜ、熊本なのか ― 2016年から続くご縁

石井食品にとって、熊本は特別な土地です。そのつながりが生まれたのも、2016年の熊本地震でした。被災地の声から生まれた、ポタージュとおかゆをかけあわせた「potayu(ぽたーゆ)」を共同開発した際、パッケージデザインを手がけたのが佐藤かつあきさんです。そのご縁を起点に、石井食品は食を通じて熊本とのお付き合いを重ねてきました。

熊本は、海も、山も、畜産も、農業も盛んな土地です。食材そのものだけでなく、赤酒や醤油といった味つけの文化にも、その土地らしさがあります。しかも、生産者との距離が近く、食材の背景や、つくる人の想いまで、一緒にかたちにできる。

だから、熊本の食材を使い、熊本の作り手と一緒に、一年をかけて一箱をつくる。創業以来初となる地域共創おせちづくりが、この土地で始まりました。

なぜ、熊本なのか。その答えは、これから訪ねる作り手たちのなかにあります。

なぜ、熊本の外箱の柄は"花"なのか ― 肥後六花と、黒と赤

『すごい熊本酒肴箱』は、食材も、味付けも、熊本のもの。その”熊本の味”を包む箱をデザインしたのが、apuarootの古庄さんです。出発点は、「肥後六花」という熊本の言葉でした。

古庄さん:女性が見て「いいな」と思えるものにしたくて。「肥後六花」というキーワードをいただいたので、それをベースにしています。人吉の「花手箱」のような、熊本の人が見たら「見たことがある」と思える連想も、落とし込めたらと。

色は、黒と赤。これも、熊本という土地から選ばれています。

井上さん:熊本は昔から、赤に因んだものを県が見出しているんです。トマト、赤牛。火の国熊本、という。黒はやっぱり、熊本城。

道の駅のお土産ではなく、カタログで選んで家に届く一箱。だからこそ、飾り立てず、余計なものを削ぎ落とした簡潔さで、中身と熊本らしさを引き立てます。

古庄さん:忙しく年末の準備をしているときに、これが届いて、ちょっと嬉しくなる。ちょっとした心遣いとか、華やかさとか。こういうのがあると、お正月をもう一回、認識するというか。意外とありそうで、ない感じなんです。

中身は、一つひとつが個包装です。器に盛り付けて、はじめて食卓に並びます。だからこそ、小袋には帯を巻き、仕上がりが思い浮かぶ絵にする。それだけで、見え方が変わります。

『すごい熊本酒肴箱』の箱のデザイン作業の様子

地元の手で描き、地元の手で撮る

箱の絵柄は、パソコンの中だけでは仕上がりません。事務所のスタッフが、手描きします。

古庄さん:イラストは、イラスト担当のスタッフが描いた画をスキャンして使うんです。水彩もあれば、クレヨンも、鉛筆の線もある。わたしと井上が「こういう感じに」とイメージ伝えて、それを絵にしてもらいます。

もう一本の柱が、映像です。撮影を担う穴見さんは、生産者一人ひとりの現場を短い映像に収めていきます。佐藤かつあきさんが、その全体をつないでいます。

佐藤かつあきさん:生産者さんごとに、短くギュッとまとめた映像をつくろうと思っていて。全員、人がいいんですよ、現場もいい。だから、いい映像が撮れるかなと。

選ぶのも、描くのも、撮るのも、熊本の目と手で。地元の作り手が地元の作り手を写すからこそ、ふだんのままの熊本が立ち上がっていきます。

実際の手書きデザイン

フォトグラファーの穴見春樹さんが、現場で受け取ったもの

穴見さん:生産者の方々が日々向き合う「現場の空気感」や「魅力」、そして「ものづくりにかける熱量」を、映像を通して伝える役割を担当しています。

撮影で一番に考えているのは、どんな場所で、どのような人が、どんな思いでつくられているのかを伝えること。記事や映像を見たあとに、モノの見え方が変わったり、味わいがより深くなったりするような、作る人と受け取る人の橋渡しを目指しています。

穴見さん:改めて熊本の生産者の方々を訪ね、皆さんの「食」への向き合い方に感銘を受け、とても誇らしい気持ちになりました。現場で感じた情熱のバトンを受け取り、熊本の方にも全国の方にも伝えていきたいです。

どの現場でも、生産者は自分たちのつくるものを誇らしげに語り、挑戦を続けていました。とくに印象に残ったのは、一番おいしい食べ方を教えてくれるときの笑顔だったといいます。

熊本に長く暮らすメンバー同士だからこそ、味の好みや感覚を共有しやすく、そこから「ああしたらいい」「こうしたらいい」と話が広がる。穴見さんは、佐藤かつあきさんやデザイ

ン事務所の「apuaroot」の皆さんと同じ熊本在住のチームで進められたことにも、今回のプロジェクトの良さを感じています。

穴見さん:生まれも育ちも熊本ですが、まだ知らない土地や風土、人、暮らしがたくさんあります。この仕事を続けられる限り、まだ見ぬ光景に出会い、知り、話し、考え、感動し続けたいです。

 

生産者さん(中央)へのインタビュー動画を撮影する佐藤かつあきさん(左)と穴見春樹さん(右)

まとめ ― 知ることが、つながること

醤油やお酒も、箱の絵柄も、映像も。この酒肴箱づくりを貫いているのは、「借りてこない」という一点です。その土地のものを、その土地の人と。佐藤かつあきさんがつないだ川尻の作り手たちは、自分たちが毎日見ている熊本を、箱の中に、そして画面の中に置いていきます。

作り手のことを知れば知るほど、その土地との心の距離がぐっと近くなります。行ってみたくなり、食べてみたくなり、いつのまにか応援したくなる。その最初のきっかけを、この連載で少しずつお届けできたらと思います。

―次回・熊本シリーズ #02|長洲町のミニトマトの作り手をたずねます。

商品情報

『すごい熊本酒肴箱(しゅこうばこ)〜生産者とともに、一年かけて作り上げた一箱〜』

熊本の生産者とともに一年をかけてつくった、2人前の酒肴箱。天草大王、火の本豚、馬肉、天草の車海老、天草ぶり、長洲町のトマト、有明海のあさりなど、熊本各地の食材を使った全9品と熊本県産米(1合)を詰め合わせました。酒肴を楽しんだあとは、「長洲町あさりの贅沢まぜご飯の素(きゃあめし)」で〆まで熊本の食文化を味わえます。全品個別包装、限定200箱です。

 

「すごい熊本酒肴箱」 盛り付けイメージ

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