日本茶を次の世代へつなぐ。ISSO TEAが変えたこと、受け継ぐこと
「日本っていいな」を現代の暮らしへ|株式会社ISSO 齊藤雅枝さん

「おいしいの種」では、次の世代へ受け継いでいきたい日本の文化を育むつくり手の想いや取り組みをお届けしています。
急須で淹れる日本茶の文化を、次の世代へどう残すのか。オーガニック日本茶「ISSO TEA」を手がける株式会社ISSO代表・齊藤雅枝さんに、有機栽培、茶師の技術、現代の暮らしに合う伝え方を伺いました。
目次
- 日本茶に詳しくなかったから、選び方の難しさに気づいた
- 世界を巡ったから見えてきた、日常のなかの「日本らしさ」
- 失われかけていた「茶葉で淹れる」という選択肢
- 一本の草から考える、日本茶と自然のつながり
- 有機栽培は、茶葉そのものと向き合い続ける仕事
- 畑の茶葉を一杯の味へ整える、茶師の「火入れ」と「合組」
- 急須かティーバッグかではなく、どちらも選べる未来へ
- いつもの一杯から、日本茶の文化を見つめ直す
- ふなばし市民まつりで、ISSO TEA試飲・販売
お話を伺った方

日本茶に詳しくなかったから、選び方の難しさに気づいた
日本茶のブランドを始めた齊藤さんは、もともと日本茶に詳しかったわけではありません。
齊藤さん:日本茶との接点は、ペットボトルのお茶や抹茶ラテくらいでした。お店で茶葉を見ても、どれを選んだらいいのかわからなかったんです。
日本茶は身近にあるのに、茶葉の違いや淹れ方はよくわからない。その経験が、後のISSO TEAにつながります。
世界を巡ったから見えてきた、日常のなかの「日本らしさ」
齊藤さんは学生時代から留学や旅を重ね、2011年から夫婦で約1年間、世界各地を巡りました。飛行機をできるだけ使わず、バスや鉄道、船で中南米、アフリカ、中東、中央アジアなどを訪ね、現地の家庭で食卓を囲みました。
齊藤さん:世界には、それぞれの土地が育んできた暮らしや文化があります。一方で、どこへ行っても似た街並みになっていく様子も感じました。だからこそ、それぞれの国が持つ「らしさ」を残したいと思ったんです。
帰国時、船上から夜の瀬戸内海の灯りを眺めながら、「日本っていいな」という感覚を次の世代へつなぎたいとの思いが固まりました。小さな雑貨店や古着店のような、人の営みが感じられる日常の風景にも、日本ならではの「手触り感」があるといいます。

鹿児島県の茶畑。ISSO TEAは有機栽培の茶葉で作られています。(提供:株式会社ISSO)
失われかけていたお茶を「茶葉で淹れる」という選択肢
世界一周の旅から帰国後、齊藤さんは起業家支援事業、出産・子育てを経験。「次の世代にいい日本の暮らしを残したい」と考え、お弁当や精進料理なども検討したなかで、日本茶を選びました。
齊藤さん:日本茶は暮らしに根づいているのに、急須で茶葉を淹れる人は減っています。私自身も、その選択肢を失いかけていました。このままでは、わたしたちの世代で途切れてしまうかもしれないと思ったんです。
海外で認められた日本茶の価値が日本へ戻れば、国内でも茶葉を手に取る人が増えるのではないか。そう考え、2024年5月にISSO TEAのブランドを立ち上げました。
一本の草から考える、日本茶と自然のつながり
ブランド名の「ISSO」は、「一草(いっそう)」に由来します。
齊藤さん:自然や暮らしにまつわる言葉を辞書で探すなかで、「一草」にたどり着きました。小さな一本の草にも価値を見いだし、美しいと思う感覚に、日本らしさを感じたんです。

一本の茶の木、一枚の葉から始まる日本茶。ブランド名には、自然とのつながりを伝えたいという想いが込められています。(提供:株式会社ISSO)
余分なものを削ぎ落とし、素材そのものの美しさに心を寄せる。ISSO TEAの名前やパッケージには、齊藤さんが「引く美学」と表現する考えが反映されています。

有機栽培は、茶葉そのものと向き合い続ける仕事
日本茶業界とのつながりがなかった齊藤さんは、業界団体へ電話をかけ、有機栽培に取り組む生産者や、仕上げを担う茶師を訪ねました。
有機栽培への切り替えには3年間かかり、その間も病害虫や収量の変動と向き合います。生産者からは、慣行栽培の1.5〜2倍ほど手間がかかるとのお話しがあったそうです。
齊藤さん:有機茶は、雑草や害虫など年間を通じた手入れが必要で、肥料も限られるため、味の濃い旨味のある茶を栽培することはとても難しいことです。日々の手間や向き合い方が、そのまま茶葉に表れます。生産者のみなさまは「手をかけるほど茶葉が応えてくれる」と、茶葉に向き合っています。
ISSO TEAは、色、艶、香り、味、重さを確かめ、荒茶の段階から味がしっかり感じられる茶葉を選定して、有機茶ならではのおいしさを追求しています。

茶葉の状態を確かめる生産者さん。(提供:株式会社ISSO)
畑の茶葉を一杯の味へ整える、茶師の「火入れ」と「合組(ごうぐみ)」
畑で育った茶葉は荒茶になり、篩分け(ふるいわけ)、木茎や粉の分離、火入れ、合組(ごうぐみ)を経て、おいしいお茶ができあがります。仕上げを担うのは、茶師・牧野益士さんをはじめとするチームです。
火入れでは、茶葉の状態を見ながら、香りとうまみを引き出せる温度を探ります。複数の茶葉を合わせる「合組」では、味を均一にするのではなく、それぞれの長所を引き立てます。
齊藤さん:一つひとつの茶葉の特性を熟知しているからこそ、茶葉を組み合わせたときに、単体ではたどり着かない味わいを生み出すことができます。
生産者が育てた茶葉の個性を受け取り、茶師が一杯の味へ整える。二つの仕事が重なって、わたしたちが味わう日本茶になります。

仕上げ工場で茶葉の状態を確かめる茶師。(提供:株式会社ISSO)
急須かティーバッグかではなく、どちらも選択できる未来へ
ISSO TEAはリーフとティーバッグ両方を取り扱っています。急須では茶葉が開く様子を眺め、好みの味を探すことができます。一方、忙しい朝には、ティーバッグをボトルに入れて持ち歩くことができます。
齊藤さん:急須でゆっくりお茶を淹れる日もあれば、サッと準備をしてティーバッグを持って出かける日もある。その日の気分や暮らしに合わせて、心地よいほうを選べばいいと思っています。
ISSO TEAに添えるカードには、産地や淹れ方、食べ合わせを記載。齊藤さん自身が日本茶を選べなかった経験から、お茶を知る手引きと、集める楽しさを形にしました。

お茶の産地や淹れ方、食べ合わせを記したカード。日本の伝統色を取り入れています。
いつもの一杯から、日本茶の文化を見つめ直す
日本茶を受け継ぐことは、昔と同じ形だけを守り続けることではありません。有機栽培で茶葉を育て、茶師が個性を見極めて味を整える。急須で淹れる時間を残しながら、ティーバッグという今の暮らしに合う方法も用意する。変えながら、その奥にある茶葉の味や自然とのつながりを残すことが、ISSO TEAの考える受け継ぎ方です。
次に日本茶を飲むとき、茶葉や香りに少し目を向けてみる。その一杯がどのような畑で育ち、どのような手を経て届いたのかを知ると、いつもの日本茶も少し違って見えるかもしれません。
ふなばし市民まつりで、ISSO TEAを試飲・購入できます
9月26日(土)、ふなばし市民まつりにあわせて、石井食品本社1階のコミュニティハウス「Viridian」でISSO TEAの試飲販売を行います。
当日は、株式会社ISSO代表の齊藤雅枝さんと直接お話ししながら、日本茶を試飲し、気に入った商品をご購入いただけます。
ぜひ、お立ち寄りください。

コミュニティハウス「Viridian」でのISSOTEA販売の様子